今まさにいままで直視できなかった歯石が、歯根の表面にこびりついています。初期治療を担当してきた歯科衛生士は、これまでどうにかして歯石を除去しようと、取り組んできたわけですが、はじめて実際に歯石の付着状態を、直接眼で確認することができたのです。

 歯石の付着している状況は、色、性状ともにさまざまです。歯の根を直接支えている歯槽骨から、3~4mm離れた処に付着しています。まるで戦国時代のせめぎ合いのように、歯石の軍勢から距離を置いて、歯槽骨が人間の体を守るために犠牲になっているようです。

 歯石を取るときは、4つの眼と4本の手を含めた、五感を駆使して行います。例えば、上顎右側臼歯部が手術部位だと仮定しますと、横になっている患者さんの右側にいる歯科医師が、歯の頬側(頬に相対する側)を、左側にいる歯科衛生士が、歯の口蓋側(上あごに相対する側)を担当します。

 つまり、自分の方に向いている、歯根面に付着した歯石を直視しつつ、除去するのです。片方がそれをしている時は、もう一方が補佐して、止血、洗浄、吸引、死角になっている部分の情報提供等をします。

 このようにして歯石をすっかり廓清する(取り切る)ことができたなら、縫合し包填材(歯の周りを覆うパテ状の包帯)で歯と歯肉をおおいます。

 手術後、投薬や諸注意の説明をし、その日は終了です。(大)