ブラキシズムとは、誰もが一度は耳にしたことがある、あのキリキリと音を発する歯ぎしりや、その仲間の総称です。グラインディング*、クレンチング**、タッピング***の三つに分かれます。

 過去には、病的なものと扱われてきました。しかしここ10年程は、さまざまな様相を呈しながらも、誰にでも起こりうる、人間の無意識の行動と捉えられています。いろいろな原因が取り沙汰されましたが、現在では精神的因子によるものという見方が、ブラキシズム研究の趨勢になってきています。

 近年では、ヒトがその無意識の行動で、脳内にドーパミン、エンドルフィンなどのホルモン(俗にいう脳内麻薬)を分泌させ、それがストレスを解消し、精神的バランスを保つために、一役買っていることが分かってきました。

 しかし、口腔領域の健康維持、管理を考慮しないわけにはいかない、われわれ歯科医療に携わる者が、ブラキシズムにどのように対処すべきかが、ここで問われることになります。(大)

 *グラインディング(Grinding):睡眠中無意識に上下の歯をすり合わせる習癖。下顎があらゆる方向へ動くため、歯牙は側方力を伴う持続的な強い力で噛み合わされ、キリキリと音を発する。

 **クレンチング(Clenching):睡眠中、覚醒時を問わず、上下顎の歯牙を強く噛みしめる習癖。下顎はほとんど動かず垂直的かつ持続的に噛むが、音は発しない。

 ***タッピング(Tapping):上下の歯牙をカチカチと噛み合せる習癖で、発現頻度も低く、強い力が発生しないため為害性も少ない。