咬合治療においては、とくに安易な取り組み(たとえばすぐに歯を削るなど)を控えるようにしています。 綿密かつ慎重な診査、診断をせずに、治療に入ることは避けるべきだと考えています。

 なぜなら患者さんと、われわれ医療従事者側との間に、大きなギャップ(考え方や意見の隔たり。ずれ。)を生じさせてしまう恐れが、この咬合治療にはあるからです。 この問題を解決する為に、われわれがすべきことは、診査、診断、説明、そして依頼があったら実際の治療という、手順をしっかり踏むことです。

 そのなかでも、治療を成功に導くために特に有効な方法として、スタディ モデル(研究用模型)を咬合器に付け、診断用ワックス アップ*をすることがあげられます。これによって、どの程度の咬合治療が必要になるかを、確認することができます。

 具体的には、咬合調整で済むか否か/ 修復物の必要性と種類/ 矯正治療の必要性と範囲/ 抜髄の必要性の有無/ 抜歯の必要性の有無/等を知ることができます。

 言い換えると、エナメル質の範囲内での噛み合せ調整で済むのか/ 被せるのか、被せるとしたらその種類/ 歯の移動をすべきか、するとしたらその範囲/ 歯髄が残せるのか/ 抜歯しないで済むのか/等が判断できます。(大)

 *診断用ワックス アップ(Diagnostic waxing):咬合器に付けた模型上で、顎口腔系の安定に必要な、歯の位置、形態および咬合を、ワックス(蝋)にて試作すること。