欠損補綴にあたり、残っている歯(残存歯)に極力負担をかけないように、考慮すべきであるという話は既にしました。

 1本の歯がない状況で、前後に歯があり間に歯がない場合を中間欠損といい、一番後ろの歯がない場合を遊離端欠損といっています。捉え方に違いがあるため、分けて説明する必要があります。

 1歯中間欠損における補綴設計は、義歯、ブリッジ、インプラントの3種類に分かれます。

 義歯とは、取り外しをする入れ歯をさします。過去に、まだ歯科医療という体を成していない、特に資格があるわけでもなく、入れ歯を作る人が入れる人でもあった時代があり、言ってみればそれが歯科医師の始まりだったようです。

 義歯は、歯と床(しょう)とクラスプ*から構成されています。人が馬に乗るところを想像したとき、人が歯、鞍が床、馬の背が歯槽堤、手綱がクラスプのようなものです。

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 歯の機能には、摂食/ 咀嚼/ 発音/ 表情構成/ 審美性の確立/ 神経筋機構における感覚受容器としての役割/ しっかり噛むことで可能な脳内麻薬と言われるホルモン分泌/ 噛むことで生まれる身体能力等が挙げられます。

 義歯でどれだけの機能回復ができるかというと、決して十分なものは期待できません。患者さんの年齢と要求度、お口の中の状態等から判断して、義歯でもシチュエーション(境遇。状況。場面。)次第で役立つことがあるでしょう。

 その意味は、まだ歳が若く歯ごたえのある肉類・パン類・貝類等をバリバリ食べたい人に、義歯は不相応であろうし、そのような要求はなく歳を重ねられた方であれば義歯でも適応できる可能性があるということです。

 ただし義歯には欠点があり、具体的には、装着による違和感/ 食べづらさと話しづらさ/ クラスプがかかる歯に対する力の負担と衛生状態の悪化/ 床と歯肉の間に起きる食物残渣の停滞による違和感や痛み/ それに伴う食事中・後における着脱清掃の必要性と、そこから生ずる煩わしさ等を挙げることができます。(大)

 *クラスプ(clasp):《名》留め金。握りしめ。握手。 《動》抱きしめる。握りしめる。