今回は、1歯中間欠損における補綴設計のうち、ブリッジの解説です。

 ブリッジは、欠損の両側の歯を削ってそれぞれの歯を被せると同時に、欠損部にも人工の歯(ポンティック)を入れる、それらが一体型で固定性の補綴物です。

 日本語で言えば”橋”であり、その構造で言えば、支台歯(両側の歯)が橋脚に相当し、ブリッジ自体は橋板(橋桁も含む。)のようなものです。

 ブリッジは、義歯と比べ噛む力も得られ、固定性なので違和感も少ない利点があります。一方、両側の歯を削らなければならない不可避の欠点を有しており、特にそれがまったくの健全歯である場合にはより際立ったものになります。

 安易に捉えられがちで、簡単に装着可能ですが、よくよく検討を重ねると、さまざまな問題が散りばめられており、そのうち特に力学的な部分で看過できない問題をはらんでいます。

 これは、私の出身大学の先輩でもあるH先生が米国の先生と共同執筆され、米国の多くの歯科大において、補綴学の教科書として使われた本に掲載されている内容を、私が通常患者さんへの説明の際、アレンジ(脚色)して使っているシェーマ(図式)ですが・・・

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 解説すると、”橋”という構造物では荷重がかかると、必ず”たわみ”という現象が起きることになっていて、それは橋板のうち下に支える橋脚のない部分が沈み、両端が浮くという変化に分析されるということ。そして、スパン*が倍になると、たわみは8倍になり、橋板の厚みが1/2になったときでも、たわみは8倍になるということがわかっています。ちなみに3倍と1/3なら27倍です。

 我々はこのような力学的な現象に関する知識をふまえ、同様のことが”ブリッジ”においても起こりうると認識して、その他のファクター(要因。要素。因子。)である、歯冠歯根比**、ルート ボリューム***、歯の動揺度、ブラキシズムの有無等を考慮しつつ、ブリッジが口腔内に適応できるかを見極める必要があります。

 実際には、プロビジョナル レストレイション(掲載済ブログ参照。)を有効に活用し、さまざまなチェックポイント(確認事項。)を経て、ブリッジの是非を判断することが望ましいと考えています。(大)

 *スパン(span):橋や迫持(アーチ)などの支柱から支柱までの間隔。《歯》ブリッジの場合は歯のない部分の距離。

 **歯冠歯根比(Crown-root ratio):歯における、歯槽骨より上に出ている部分と、歯槽骨に埋まっている部分との比率。健康な歯では、歯根比が大である。歯槽骨の吸収、歯根の吸収そして歯の挺出により、歯冠比が大になっていく。

 ***ルート ボリューム(Root volume):歯根の容量。歯槽骨と接している、歯根の表面積が大であるほど、骨植がよく有利である。つまり、長さのみからの概念たる歯冠歯根比だけでは、ブリッジの支台歯として適正かどうかの判断基準として不十分であるということ。