トリートメント プランは治療計画を、プロビジョナル レストレイションは暫定的な修復物を意味します。今回、テーマ(表題)としてなぜこの二つを並び称したかというと、似た共通のコンセプト(概念)があるからです。

   歯科治療はこの半世紀で格段の進歩を遂げました。わたしが歯科大を卒業したのが1980年(昭和55年)、3年後に東京の港区で開業した当時の治療事情は、たしか患者さん一人にかけられる時間が、せいぜい10分程度ではなかったかと記憶しています。

   その後歯科医院が増え、現在患者さん一人に30分はかけられるようになり、世の中では歯科医院経営の大変さが云々されていますが、患者さんの立場からすれば十分とは言えないまでも、きちんとした説明と治療が受けられる、至福の時代になったと言えるのではないでしょうか。

   そのような背景を踏まえ、一人の歯科医師にとって、担当する患者さんが多ければ出来なかったことで、今は出来るようになっていることがあります。これからお話しすることは、私の卒後の研鑽のなかで、主に米国で教鞭をとった経験があったり、留学後帰国された先生方の講演・講習会において学んだことですが・・・

 一つは、十分な診査後、問題点の列記と検討、および綿密な治療計画(トリートメント プラン)の立案であり、もう一つは、単なる仮歯ではない暫定的な修復物(プロビジョナル レストレイション)を用い、そこから得られる情報を洩らさず活かして、修正しつつ様々な問題点を解決し、材料以外限りなく最終修復物に近づけることです。

 これら二つのテーマに共通するコンセプトは、前もってすべきことを先延ばしにせず、あらかじめ可能なかぎりの時間と労力を使って置くということです。これにより、治療途中で手順が錯綜するとか、患者さんとの間に行き違いが起こるとか等、時間の浪費やトラブル発生を未然に防ぐことができます。

 きちんとレールを敷いたら、あとはそれに沿って進めればいいトリートメント プランと、お試し期間にいろんな経験と問題解決ができて、最終修復物に生かせるプロビジョナル レストレイションとは、近代歯科医療における最も進化したコンセプトなのです。(大)