インプラント治療に隠されたある秘密についてのお話しです。チタン製インプラントが優れているのは、まるで骨と結合*して一体化したかのように動揺がなく、しかも堅牢である為どんなものでも強く噛める点です。

 ではなぜそのような関係が得られるのでしょうか?本当にくっつくのでしょうか?それは実はチタンと生体との親和性によるものなのです。

 抜歯の場合、歯槽骨がどのような治癒経過をたどるかというと・・・術直後の処置として、骨鋭縁部/ 骨や歯牙の破折片/ 不良肉芽**/ 隣接歯の歯石など、治癒を妨げる感染物質を除去後、新鮮な血液で抜歯窩を満たすと・・・それが血餅(血の固まり)から肉芽組織となり、約3か月のときを経て骨が新生されます。

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 つまり歯槽骨は歯を失っても、阻害する因子がなければ、まるで地面に水溜りができるように、背が高き骨に囲まれし血液貯留可能な陥凹部において、新たな骨が作られる自然治癒能力を有しています。

 このような抜歯窩に骨ができるのと同様のことが、実はチタン性インプラントの場合でも起き得ます。チタンが介在してもその存在を全く無視するかのように、表面に寸分の隙間なく新生骨が形成され、まるで二つの物質が結合したかのような関係が生まれます。これは過去に使われた他の材料ではなかったことです。

 以上のような、ヒトが持つ骨の自然治癒能力と、それを妨げない骨とチタンとの親和性こそが、現在のチタン製インプラントをして、まるで骨結合しているかのような印象を与え、そう表現させる所以になっているのです。(大)

 *結合:結び合うこと。結び合せて一つにすること。その結びつき。

 **肉芽:肉芽組織に同じ。外傷や炎症などにより生体の組織が欠損した時、その破壊部を修復するため、周囲から発達してくる組織。毛細血管に富む線維結合組織で、新しいものは鮮紅色・顆粒状で軟らかく肉様に見えるが、次第に水分を失って硬化し瘢痕に化する。