多数歯欠損における義歯の問題点として、前回主に残存歯の基礎治療に関して説明しました。今回は義歯装着に際しての、残存歯への配慮につき言及したいと思います。

 基礎治療が済んだと仮定した上で・・・義歯の設計にあたり、できるだけ残存歯に負担を強いることがないように、装着することを考えるべきであることは既に述べました。

   その点に関し具体的に詳述してみると・・・設計にあたっては口腔内の長期的な健康維持を念頭に置き、刹那的な具合の良さなど、患者さん受けをねらうことはつつしむべきで、

① 必要な間接維持装置*や大連結子**を設定する。
② 粘膜面(義歯の歯肉に接する内面。)を適合させる。
③ 残存歯と義歯との咬合を調和させる。
④ マウス プレパレイション***を必ず行う。

 以上の処置を講ずることにより、残存歯に必要以上の負担をかけない設計が可能になります。ところが日常眼にする義歯は、残念ながら残存歯に過大な負担を強いている場合が多い印象を持たざるを得ません。(大)

 *維持装置:脱離や転覆に対応する為に設定される、義歯の構造の一部分。主にクラスプ(歯に掛ける止め金。)と称する維持装置が使われる。欠損に隣接する歯牙に設定される直接維持装置と、欠損から離れた歯牙に設定される間接維持装置がある。

 **連結子:義歯の床(歯を植立させ、歯肉の上に乗る部分。)と床や、床と維持装置をつなぐ部分の構造名。離れた欠損部の床と床をつなぐ大連結子と、床や大連結子と維持装置とをつなぐ小連結子がある。

 ***マウス プレパレイション(Mouth preparation):広義では、部分入れ歯装着に先立ち、より治療効果を上げるために行う、包括的な視野に基づく歯科全般にわたる処置。狭義では、部分入れ歯の安定性、維持性、着脱の容易性等のため、鉤歯に特有の形態を与えること。

   PS:マウス プレパレイションの詳しい説明は別の機会に譲ります。