総義歯が歯肉と吸着(吸いつく。)する為には、実はいくつかの理由と条件があります。けっして”糊(のり)”を使うわけではなく、入れ歯安定剤のお世話になるわけでもありません。

 冷たい飲み物等が入った汗をかいているグラスを持ち上げると、いっしょにコースター(コップ敷き。)がくっ付いてくるという経験は、誰でも一度や二度は持っているのではないでしょうか?

 グラスの底とコースターとがほどほどに近接し、そして縁が緊密に接して、両者の間に水が満たされれば、その表面張力を借りて起こりうる現象だと思います。

   義歯にあてはめれば、その内面と口腔粘膜との適度な適合性、さらに辺縁の封鎖性、そして唾液が介在すれば同じことが起こるのは自明の理かと思います。

 しかしその吸着している義歯に対して、仮に吸着を解くほど転覆させる力が働くとしたら、義歯の安定は不確かなものになってしまいます。

 だからこそ、獲得された義歯と粘膜との吸着を、後押しし更に確固たるものにする役を担う要件である、『下顎位』に言及しないわけにはいきません。下顎位に関しては諸説こもごもですが、私は『中心位*』と呼ばれるポジション(位置)を、総義歯治療成功のための下顎位と捉えています。(大)

 *中心位(Centric relation):下顎頭が関節窩内で緊張することなく、最後上方に位置し、そこから自由に運動を行えるときの頭蓋と下顎の位置的関係。下顎がこの位置にあるとき、下顎頭は関節窩内で純粋な開閉運動を営む。

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 ps:なおこのシェーマは、2014.08.20.のブログに掲載したものを再使用しました。