ここでいう”調整法”とは、しかるべき手順を踏み必要な時間をかけて作成された総義歯が、一度は良好な経過をたどったのち、時間の経過とともに不具合が生じた際に行われる調整を意味するものです。

 前回のブログで、総義歯を口腔内に装着した状態を、ダブルバーガーに例えました。四つの構成要素が縦に重なり、三つの接触面を有する、一つの構造体として捉えるという話をしました。

 総義歯治療終了時では、閉口時に正中部分を注視しても上下の義歯は前後左右にずれることなく、軟組織の弾力性の分しずむだけで、それはごくわずかな上下方向の動きとして確認できます。これが、総義歯が理想的に調整された場合の上下総義歯が咬み合った際の様相です。

   ところがある程度時間が経過すると、口腔粘膜と咬合面(噛み合せる面 )に変化がみられます。その結果、上下の総義歯が咬み合うとき、前後左右のずれが生じるようになり、それが高じれば吸着が減じます。

 口腔粘膜では殆んどの場合で吸収がおき、稀に増殖する例もあります。どちらにしても義歯側の粘膜面(内側)の裏装(裏打ち)が必要です。

   咬合面では磨耗がおき、それは人により千差万別で、噛みぐせ、嗜好する食物、ブラキシズム等の程度や度合でさまざまなパターン(様式)があります。咬合調整ですむものから、咬合面を再度作り直す必要があるものまで多岐にわたります。(大)