40代の女性。犬歯の唇側転位および低位(いわゆる八重歯。)と開咬(閉じても前歯が咬み合わない。)あり。患者さん自身の審美的要求と、検診時に確認された臼歯部咬合性外傷による問題解決のため、矯正治療を含む包括的な治療を開始した。

 臼歯部は慢性的な歯周組織の炎症、咬合面の顕著な磨耗、歯肉の退縮と楔状欠損、知覚過敏等が確認され、顎関節症の症状も存在し、ブラキシズムの関与が強く疑われる。
   
 歯周組織の炎症の原因である、歯垢抑制の為のブラッシングの徹底と歯石除去、虫歯治療、不良修復物の除去等・・・いわゆる初期治療を終了後、矯正治療に入る。

 動的矯正治療開始後、約1年1ヶ月経過・・・

 私『ここまで順調過ぎるくらい良い状態ですよ!』と、矯正前の模型と現在の歯並びを鏡で比較してみていただく。

 患者さん『おばさんでもこんなに良くなるんですね。』

 私『年齢は関係ありません。何よりブラッシングを頑張っているし、アポイントも守っていただき、あなたの協力があったからですよ。』

 患者さん『すごく嬉しい。』と、治療効果に満足している様子。

 患者さんは何と言っても、歯並びがどんどん良くなり、様々な不快事項が消失していることが満足ですが、我々が気にするのは、歯や歯周組織の健康が維持されつつ矯正治療が順調に進んでいるかという点です。

 やはり治療は、患者さんと我々との相互理解と協力があってこそ、成功に導かれていくものだという確信がさらに深まった、とある日の診療室での出来事でした。(大)