矯正治療が、単に患者さんが訴える、見た目(出っ歯、受け口、八重歯など)だけの問題解決なら、その価値は半分でしかないのではないでしょうか?

 矯正治療によって得られる恩恵には、審美面、機能面そして精神面があげられます。 そのなかの審美面には、歯その物の見え方と口元の表情構成があり、機能面には、発音、摂食、咀嚼、咬合等があるかと思います。

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 その中の咬合を取り上げた場合、すべての歯がバランス(つりあい。均衡。)よく、機能を担当することができれば、究極の目的であるはずの、一生涯自分の歯を使い続けるという可能性が拡がります。

 そもそも、無理なく機能する為に、ある程度の形や位置を伴う必要性があるのが、世の中に歯ばかりでないのは枚挙にいとまがありません。

 歯の位置に問題があれば、休まず働かなければならない歯や、全く働くことができない歯が出ることになります。また、歯が傾いていれば、軸方向に力が伝わらないための、側方力による負担と、歯垢の停滞を招きます。

 本来、歯科治療における矯正治療の価値は、歯をあるべき位置に動かすことで、患者さんの主訴を解決しつつ、口腔内の環境整備、ひいては顎口腔系の安定にまで関与できる処にこそ、見いだされるものではないでしょうか?さすればそれが病気の治癒にも、予防にもつながっていきます。

 患者さんは多くの場合、審美面を求めますがそれだけでなく、機能を兼ね備えた審美性の追求こそ、真の矯正治療の在り方ではないでしょうか?(大)