今まで述べた歯周外科手術の意味合いは、炎症抑制を目的とした、言わば外科処置を伴う歯石除去でした。しかし歯周治療における外科処置には、環境改善を目的とした場合もあるので、紹介しましょう。

 たとえば、バイオロジック ウィズ(生物学的幅径)という概念があります。健康な歯肉溝底部と歯槽骨頂との距離が、平均で2.04mmというものです。この数値は、上皮付着と結合組織を合わせた巾で、いわば歯と歯槽骨以外の軟組織が、健康維持のために堅持すべき厚みと言えます。

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 具体例をあげると、虫歯が歯肉の頂上より深く進行していたり、人為的に(特に歯と歯の間でよく見受けられる例ですが)歯肉の中深くまで歯が削られ、修復されている場合、いくらブラッシングをしても歯肉の炎症(発赤、腫脹、易出血)が改善しないことがあります。

 つまり健康な歯肉溝底部の、歯と歯肉の付着が侵され、虫歯や被せ物が歯槽骨頂に異常に近づいていることで起きています。歯を部分矯正で挺出させるか、歯周組織を根尖(歯の根の先端)方向に移動させることにより、バイオロジック ウィズを再現できます。

 これにより、歯と歯周組織の健康な関係が得られ、患者さんは無理なくブラッシングの効果を発揮できるようになります。(大)