根分岐部病変のお話しの続編です。病気の分類には、論文を書いた人の名前が付いたりして、多々ありますが、一つの医療機関でスタッフ同士(陣容。顔ぶれ。)が、異なる分類を使うわけにはいきません。診査、診断、ミーティング(打ち合せ)等で齟齬が生じないように、私共ではある分類を改変し、統一して使っています。

  ここでは患者さんに、病気をわかりやすく捉えていただく為に、二つの分類で説明します。例えば下顎第1大臼歯の場合…(両隣の歯に向かって2本の根が開いている形が典型的ですが…)

 第1度:分岐部での水平的骨吸収が、頬側や舌側から歯の幅の4分の1までであること。であれば、ファーケイション プラスティーで対応できます。先ず、修復物作成に当たってオーバー カントゥアー(覆うように張り出した外形)にならない為、歯の形成にフルーティング*を付与します。これによって、水平的骨吸収上方の、いわば”庇”になっている部分を解消することができます(オドント プラスティー)。そして、歯周組織への比較的簡単な外科処置(オステオ プラスティー、ジンジボ プラスティー)で、水平的骨吸収下方の、”棚”になっている部分を解消します。

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 第2度:分岐部での水平的骨吸収が、頬側や舌側から歯の幅の4分の1をこえるとき。この場合は、抜髄(神経の処置)、歯の分割、歯根の一部除去などが必要になってきます。また条件が揃わないとできませんが、トンネリング(歯を分割せず、トンネル状に横穴を通す)という治療法もあります。

 第1度と第2度では、治療方針にこれだけの差があります。だからこそ、早期発見早期治療の原則に沿って、はやく手を打つことの価値が、より際立つ病気と言えます。(大)

 *フルーティング(fluting,fluted):with a pattern of curves cut around the outside(外側周囲が湾曲状に削られた形を表現する英語。日本語にそれを表す適当な言葉はない。)