結論から言うと、前歯と臼歯は相互に助け合う関係です。

 前歯は臼歯の支えがなければ、健康な状態で長くその位置に、とどまることは困難であろうし、また臼歯は前歯の誘導がなければ、強い側方力にさらされ、負担荷重で寿命を縮めることになるでしょう。

 そのような、臼歯の働きをバーティカル ストップ(Vertical stop:垂直的な歯止め)といい、前歯の働きをアンテリア ガイダンス(Anterior guidance:前歯誘導)といっています。

 咬合治療において、バーティカル ストップとアンテリア ガイダンスは、互いに欠くことのできない密接な関係という意味で、車の両輪と言えましょう。

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 実際の臨床においては、診断用ワックス アップをもとに作成した、プロビジョナル レストレイション*を使い、咬合治療をすすめていきます。そこから得られる情報を注意深く観察し、洩らさず活かして、試行錯誤しつつ最終修復物へと仕上げていきます。 

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 1本の歯から、歯列、周囲組織という、口腔内の安定ばかりでなく、歯などの固有感覚受容器、顎関節、筋、神経、その他からなる顎口腔系と、それを制御する神経筋機構との調和が得られれば、咬合治療は成功への道をたどるでしょう。(大)

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 *プロビジョナル レストレイション(Provisional restoration):直訳では、暫定的な修復物。単なる仮歯ではなく、治療を成功に導く為に、あらゆる必要な情報を収集し、活かして、最終的には材質以外、最終修復物と同等の形態、機能を有するように仕上げていく、レジン(合成樹脂)性修復物。