根管治療とは、歯の生活をつかさどる、俗にいう神経(正しくは歯髄)が入っていた、歯の中にある空洞(歯髄腔)の治療です。

 虫歯(齲蝕)が拡がって歯髄腔に届き、歯髄が感染し放置されると、根の先の外側の骨が吸収し膿がたまります(根尖病巣)。 これがさらに放置されると、血行性に病原菌が体中を巡回することになります。 古くから”歯性病巣感染”といって、心疾患や関節リューマチの原因になる恐れがあると言われています。

  むかしは、神経を薬で殺した(壊死させる。失活させる。)時代がありましたが、失活剤が漏れると歯周組織が重篤なダメージ(損傷)をこうむるので、麻酔が禁忌ではない限り、使われなくなっています。 そして根管充填(最終的な薬を入れること。)も、その昔は薬理効果のあるペースト状の糊剤か、脱脂綿に薬をしみこませたものを入れて終わりでした。一人の患者さんの治療に時間を取れない時代の遺物と言えなくもない、過去の一時期において役に立った簡便な治療法でした。

 この根管充填法を今でもときどき見かけることがあるのは、非常に残念なことです。なぜなら、薬の効果はいつか無くなるものだからであり、現在は時間をかけようと思えばかけられる時代の筈だからです。 

  今は歯の中の原因をすっかり取り除き、そのなかを出来るだけ隙間なく、劣化しない根管充填材で埋めることが最も重要で、それによって再発を防ぐことも可能になります。 そしてあとの歯根周囲の問題は、ヒトの治癒能力で治るという考え方になっており、そうなってからおそらく半世紀近く経過しています。

 現在の根管治療が、昔に比べて回数、時間を要するのは根管充填の際に密封封鎖する為、原因除去ののち、長さなりに、また曲がっている場合は曲がっているなりに、歯の内側を拡大してから行うからなのです。(大)