俯瞰とは、鳥瞰(a bird's-eye view)ともいい、高い所から全体を見渡すことで、鳥が生きんがため獲物を仕留めるべくおこなう、必然的な行動として知られています。

 日々いろいろな出来事が起きる臨床のなかで、鳥のように俯瞰できたらと、思うことがしばしばあります。

 お口の中では、直視できるところは勿論のこと、ミラー テクニックを使えば歯の裏側も見ることができます。 しかし、眼に見えない部分の治療をするとき、それは根管治療の際の歯の中や、抜歯の際の歯の根のような場合ですが・・・どのような形なのか?・・・そこで何が起きているのか?・・・を想像する必要があります。

 もちろん、その際には必ずX線を参考にします。 通常、X線診査で歯を見る方向は唇頬側といって、相手の顔を正面から見るときと同様の、限られた方向からだけになります。 そのような治療の中にはいっている時、ともすると自分の見方まで、参考にしているX線と同じ、二次元的な見方しかしていないことに気付き、愕然とすることがあります。

 それなら三次元的なC.T.を、使えばいいと思うかもしれませんが、X線量が少なくて済むデジタルとは言え、何枚も撮らなければならない症例では、X線量が多くなるうえに、情報量が多すぎてふさわしくないのです。

 口腔内を俯瞰したいという真の意味は、眼に見えるものと見えないものを含めて、透視可能な超能力者になったように、口腔内のすべてをシー スルーで見ようとすることです。

 それができるようになると、その施術者の治療レベルは格段にあがると思っています。
 
 私たちがすべきは、先入観や固定観念をすて、解剖学的知識を活かし、その時々の治療から得られる情報を逃さず拾い取って、あらゆる可能性を模索することです。

 そして常に冷静に、あらゆる方向から見ている状態で治療することが、直接眼で確認できない部分の治療ではとくに役立つのです。(大)