どうしてクラウンを入れる必要があるのか、考えてみたいと思います。

 一つにはかなり稀ですが、神経(歯髄)が健康で生活しているのにも拘らず、歯冠部歯質を殆ど虫歯に侵された場合で、クラウン処置が必要になります。

 二つ目はこれがほとんどですが、虫歯などで神経が失活した場合です。 歯が神経を失うと、歯の中への血流が途絶え、栄養供給がなくなります。 歯が生きていれば例えば歯髄には、虫歯が近づくとそれに相対するように新しい組織(第二象牙質)を作って、侵されないように守る生体防御反応もあります。

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 しかし神経が失活した歯は、そのような機能が無くなり、時間の経過とともに、破折しやすく着色しやすい状態になっていきます。 着色は未だしも破折が起きると、抜歯に至る恐れさえあります。 このような問題を払拭する手立てとして、クラウンを入れる必要があるのです。

 三つめは歯周病で動揺がつよく、固定しないと歯が移動し咬合崩壊*の恐れがある場合です。 歯周治療の一環として、永久固定と称するクラウンでの連結固定により、歯の位置の長期的な安定と、咬合を確立かつ維持することができ、歯周病の再発を防ぎます。(大)

 *咬合崩壊(Bite collapse):歯周病の進行とともに、歯牙の支持組織が失われることで、動揺が増し移動することにより、本来の咬合機能が成立しなくなる病態。 歯槽骨の吸収と歯牙の移動は、とどまることなく進行し、坂道を転げ落ちるように、歯止めのきかない状態に陥ることになる。 結果的にすべての歯を失う恐れのある、一症候群。