歯肉より上に、歯質がほとんど無いことがあります。 クラウンを入れようとしても、つかまる場所がなく入れようがありません。 このような場合、前処置として支台築造をする必要があります。

 その際、何の工夫もなく安易におこなうと、のちにさまざまな問題が起きることになります。 たとえば、支台築造とクラウンがひとかたまりで脱離したり、歯根破折に至る恐れがあります。

 まず、脱離への対処では、コーピング タイプ*のダウエル コアにすることがふさわしいと考えます。 

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  これにより、万が一脱離する力が掛かった時でも、ダウエル コアが歯に残り、クラウンのみの脱離を期待できます。 言わば逆転の発想で、歯を守るため掛かる力の解放を、クラウンだけが外れることでしようとしているのです。

 次に、歯根破折への対処では、通常のダウエル コア(支台築造、1を参照。)と同様の考え方で、歯にはサポーティング サーフェスとカントゥア べベルを、ダウエル コアにはラウンド ティップを形態として付与します。 これによって、咬合力から派生した楔状の力から、残存歯質を守ることができます。

 この治療法の欠点は、クラウンの根元に巾0.3mmで帯状の、ダウエル コアの一部が露出することです。 審美的にはマイナスですが、歯が持たなければ元も子もありません。 極力歯肉溝内に入れるようにし、ロウ リップ(唇が顕著に下にさがる。)でなければ、さほど目立つものではないと考えています。(大)

 *コーピング タイプ(coping type):copingは、《建》笠石、笠木。copeは、おおいかぶさる。