欠損補綴とは、歯が失われた(欠損)部分に、人工物を入れる(おぎないつづる=補綴)ことを意味します。

 患者さんに、こう言われることがあります。『特に困っていないんだけど、歯を入れる必要があるの?』…

 このことに関しては以前にも触れてますが、欠損を放置すると、対合歯(咬み合う相手の歯。)の挺出*/ 隣接歯の欠損側への傾斜移動/ 歯の移動から派生せし、咬合(噛み合せ)の変化による、咬頭干渉**/ 欠損歯が本来担うべき機能が失われることによる、他の歯への負担荷重/ 対合歯の機能できないことによる自浄性の消失/ 歯の位置の乱れから生ずる、歯垢が停滞しやすく除去しにくい為の虫歯や歯周病へのなりやすさ等の問題が起きることになります。 

 そのような問題を起こさないため、欠損部への補綴を検討するわけですが、その際のコンセプト(一貫した視点や考え方。)は、起きてしまった問題解決をはかったうえで、残存歯(残っている他の歯。)への負担を極力少なくすることです。

 それを考慮することができないと、最も避けなければならない、2~3年おきに次から次へと抜歯になっていくという事態になります。そのような歯止めのきかない状態におちいると、欠損がどんどん拡大し最終的には無歯顎になる恐れがあります。(大)

 *挺出:歯が上方に、歯肉から抜け出るように移動すること。歯槽骨と共に移動することも有り得る。

 **咬頭干渉:下顎の開閉運動や偏心運動に際し発生する咬頭の衝突。咬合病の原因として中心位の早期接触と非作業側の早期接触が重視される。