2歯遊離端欠損症例においては、咬合機能における臼歯の役割である、バーティカル ストップ(垂直的な歯止め。)をいかに再生できるかが鍵になります。

 補綴物の設計にあたり、考えられる可能性をひとつずつ検討してみますと・・・

   義歯の場合、欠損を放置するよりは装着によって、対合歯の挺出や歯垢の停滞を防ぐことができますが、欠損部以外に設定される義歯の連結子*や維持装置**による違和感/ 食事の度にはずして清掃を要する煩わしさ/ 噛む力の弱さ等を、患者さんがどう受け容れるかが 問題です。過去に、コーヌス義歯と呼ばれるドイツから発祥した二重冠が多用されたことがありますが、さまざまなトラブルで使われなくなりました。

 ブリッジの場合は適応できません。

 インプラントの場合、理想的な補綴物の設計が可能になります。ある意味で、現在のチタン製インプラントの良さが、見事に嵌る欠損形態と言えなくもありません。この欠損に対し他の歯に頼らず、失った歯を蘇らせるばかりか、それ以上の働きを可能にします。放置すれば欠損が拡大し、義歯を装着してもそれがどんどん大きくなっていく恐れがありますが、その負の連鎖を根絶できる夢のような欠損補綴と言えるのではないでしょうか。(大)

   *連結子:義歯の床(歯を植立する部分。)と床や、床と維持装置等をつなぐ部分の構造名。離れた欠損部の床と床をつなぐ大連結子と、床や大連結子と維持装置とをつなぐ小連結子がある。

 **維持装置:脱離に対応する為に設定される、義歯の構造の一部分。主にクラスプ(歯に掛ける止め金。)と称する維持装置が使われる。欠損に隣接する歯牙に設定されるものを直接維持装置、欠損から離れた歯牙に設定されるものを間接維持装置と呼ぶ。