日常臨床において、大臼歯2本を失った場合の欠損補綴に対し、手前2本の小臼歯と奥の親不知を支えとしたブリッジ装着例を、目にすることがままあります。

 健康保険の解説書では、確かに【④⑤67⑧】(上述のブリッジを表す記号。)という設計は適応症になっています。しかし、この欠損形態ならすべての患者さんに適応すると、安易に判断して果して良いのでしょうか?

 歯科のプロフェッショナル(専門家。職業としてそれを行う人。)なら、その医療行為が患者さんの健康に寄与できるかを検討し、それと判断できて初めてそうすべきであることは自明の理かと思います。

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 そもそも、歯科治療を成功させる為には、決して外してはいけない幾つかの臨床的判断基準があり、その中の一つに咬合の問題を挙げることができます。つまり歯科治療には、ジグソー パズル(jigsaw puzzle)にピース(piece.小片。)を当て嵌めるようなわけにいかない一面があることを、理解していただかなければなりません。

 この場合、下顎の前方運動時、ブリッジの親不知に相当する部分が上顎と干渉し、前歯本来の働きができない事態に陥る恐れがあります。そして、これを回避しないと顎関節症になる確率が高まります。(大)