以前にも申し述べましたように、S市のA先生にはさまざまなことを習いましたが、今回のテーマ(主題。題目。)に関しても、ユーモア*とアイアニー**にあふれた解説をしていただいたことを、今でも昨日のことのように憶えています。

   難症例というと、誰もが歯槽骨がない(義歯が乗る骨の高まり、いわゆる土手がない。) 状態を思い浮かべるのではないかと思いますが・・・なんとそれについては、難症例でもなんでもないとおっしゃるのです。

 総義歯の難症例とは、指で歯肉を押しても痛むような、歯槽骨に不規則な形態がある場合/ 舌の姿勢が悪い場合/ いくら噛み方の説明をしても前噛みをする場合なのです。

 すべての歯を失ってから、長い年月が経過していると、歯槽骨が吸収し歯槽堤がほとんど無くなってしまうことがあります。それでも上記の難症例のような場合でなければ、吸着(義歯が歯肉とくっ付く。)が可能だと教えられました。

 是が非でもこの総義歯治療システムを、自分の診療室で確立しマスター(修得。熟達。)したいという、そのときの気持ちの高ぶりが今、鮮明によみがえります。(大)

 *ユーモア(humor):健全の人がもっている共感者を得るような人間味あふれたおかしさ。

 **アイアニー(irony):皮肉。反語。予期に反する結末。