総義歯は『水面に浮く舟のようなもの』だと教わりました。
 
 舳(へ)*や艫(とも)**に人や荷物が片寄れば、そちらが水に沈み他方が水から浮くでしょうし、定員以上の人や荷重限界を超えた荷物が乗れば、舟が沈むのは自明の理です。

 口腔粘膜は、頬・口唇・歯槽粘膜、歯肉、舌などにより構成される軟組織ですが、その被圧縮性は場所によりさまざまで、そのなかで総義歯は言わば口腔粘膜に漂う舟のようなものだという意味です。

 このような状況下で義歯の安定を考えるとき、『207.総義歯と椅子』(2015.06.16.掲載)の解説を参考にしていただくとわかりやすいかと思います。

 4本脚の椅子に人が座って安定しているとき、脚を通して床に対し均等に力が掛かっているわけで、まさに舟や総義歯に対しても安定させるなら、同様に考えるべきだと思いますがいかがですか?(大)

 *舳:へ。へさき。舳先。船首。

 **艫:とも。船尾。