口腔内に総義歯を装着した状態をハンバーガーに例え、上から、①上顎口腔粘膜/ ②上顎総義歯/ ③下顎総義歯/ ④下顎口腔粘膜という順で重なり合って、一つの構造体を形成しているというイメージを持つと、幾つかのチェック(確認)機能を働かせることができます。

 上下の総義歯が吸着も得られ安定しているとき、口腔内に装着された状態で、正中部分を注意深く観察すると、閉口時に義歯は前後左右にぶれることなく、口腔粘膜の被圧縮性の分だけわずかに沈む程度であることが確認されます。

 顎関節の終末蝶番運動*の範囲において、関節頭(下顎頭)は純粋な回転のみを行い、下顎が開閉だけしますが、口腔内に装着されている総義歯が良好に経過しているものであれば、このような開閉運動時に吸着が失われることは皆無だと言えます。

 リコールなどの検診時に、上記の確認作業をしますが、上下の義歯を噛み合わせた際、上顎の義歯が前後左右にぶれるようになっていたり、上下の義歯の吸着が弱まっていることがあり、その原因としては、①ー②、②ー③、③ー④間のいずれかの問題か、あるいは複合した問題が疑われます。

 ①ー②、③ー④間であれば粘膜面の裏装が、②ー③間であれば咬合面の調整が必要になります。(大)

 *終末蝶番運動(Terminal hinge movement):下顎頭が関節窩内の最後上方位(中心位)にあるとき営まれる下顎の純粋な回転運動。矢状面で10~13°の開口量の際に認められる。