歯周治療に関して患者さんに理解を深めていただこうとすると、どうしても他の治療内容よりその説明頻度が高まり、しかも一回一回の説明に時間を要することになってしまいます。これは一体どうしてなのでしょうか?

   それは歯周治療自体(原因の明確性、治療法、予防の考え方など。)が、ここ数十年で様変わりしたことが理由の一つであり、そして患者さんを受け入れる歯科界の体制もまた、急激に変化していることがその二つめであり、それらに対して患者さんの意識が変わらず、歯の健康意識が高まらないまま停滞し続けていることがその三つめであると言えます。

 その昔、『先生におまかせします。』と患者さんが言い、それを治療する側も不思議とも思わぬ時代がありました。それは一人にかけられる時間があまりにも少なかったからです。しかし現在はそういう時代ではなく、患者さんはきちんと説明を受け理解し信頼できるなら納得して依頼し、自分も参加する(協力する)のが治療なのです。(インフォームド コンセント*)

   そのうえ歯周治療は、前述の通り治療法が50年位前までは確立されていませんでした。その後研究により原因も治療法も明確になり、治療が成功するためには系統立てられた治療システムが不可欠である事がわかったのです。それがここ40年位なものなのです。

   さらに受け入れ側の治療体制として、歯周病治療に必要な一人に一回につき30分程度の時間が最小限確保できるようになったのが、ここ10年〜20年位なものなのです。 

 このような治療法および治療体制の言わば過渡期に対し、治療を受ける患者さんの意識は乗り遅れていて、しかもそれが延々と続いている状態であり、この点に関する限り既に過渡期とは言えなくなってしまっています。なぜなら私自身資格を取って以来、患者さんに全く同じ治療説明をし続けていて、またそうせざるを得ないという現実がそれを如実に示しています。(大)

*インフォームド コンセント(informed consent):医学的処置や治療に先立って、それを承諾し選択するのに必要な情報を医師から受ける権利。医療における人権尊重上重要な概念として各国に普及。;《医》十分な説明に基づく同意。手術や実験的治療をうける場合、その詳細を知らされたうえで患者が与える同意。