日本において、患者さんの歯科治療への理解度、向き合い方を推し量ってみると、残念ながら欧米に比べかなり理解不足で消極的であると言わざるを得ません。その根拠は、毎日患者さんと接していると、治療しないで済む方法はないのか?と問われることが非常に多いからです。

 歴史的にもさまざまな変遷があり、いまの日本の歯科界の現状がある中で、この世界にかかわるすべての人が同じ目的で、足並みを揃えるべきだと思うのは、理想主義者のたわごとでしょうか。

 歯科界にかかわる全ての人が、私利私欲でなく、有名になるためにでもなく、持つべき究極の目的は、患者さん一人一人の歯の健康に貢献することである筈です。そのためにはすべての患者さんが、歯の健康管理を心から信頼して任せられる歯科医師を持つことを目指すことではないでしょうか。

 そのとき、歯科医師がなすべき事は、常なる研鑽と反省と軌道修正による継続的な進歩であり、歯科医師がしてはならない事は、患者さんに迎合することであり媚を売り人気を取って利益を追求することだと思います。

 専門家としての誇りを持ち、病気の治療とともに原因の除去にまで踏み込み、さらに発病を未然に防ぐために予防の必要性を説くことが、自分の臨床が法律用語でいうところの”未必の故意”に陥らずに済む唯一の手立てではないかと戒める毎日です。(大)