この根面滑沢化という概念も歯石除去の一環であり、眼で確認することが難しい歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)のなかの、歯根面に付着した歯石を取ることで得られる状態で、それを表現する言葉から命名された治療の一種です。

 くどいようですが皆さんには、症状がないから大丈夫……ではない、ということを肝に銘じていただいたうえで、疑いのまなこで歯周病に対峙してほしいのです。

 ひとは、思い込んだり、決めつけたりすると、冷静に見えなくなってしまうような気がします。わたしは自らそれを戒め、見逃さないぞという心構えをするようにしています。  

 そのためには、五感を使う必要があります。眼で確認できるのはエアー シリンジ(風をかける器械)を使ってもせいぜい1~2mmまで、ごく細い探針を使えば手指による触覚と聴覚を研ぎ澄まし、表面性状を感じ取ることができて3mm以上の世界へいざなわれます。

 キュレット(鋭匙、細かい歯石を取り歯根面を滑沢にする手用器械)を使い、耳をそばだてます。ガリガリが、カリカリに、さらにキュッキュッと音が変化していき、最後には音がしなくなります。同時に手指に伝わる微細な感触の変化でも確認していきます。

 つまり、歯の表面をザラザラ(粗ぞう面)からツルツル(滑沢面)にしようとしています。なぜなら健康な歯の根の表面が磨かれた大理石のように滑沢であるからです。(大)