ひとことで歯周病向けの歯ブラシ選びと言っても、治療のステージ(段階)がどこなのか、実際に手を下す患者さんご自身の手がどのように動いてくれるのか、歯肉の反応がどうなのかによって変わってくるものですが……

 一般的なお話しとして、歯周病にふさわしい歯ブラシ選びは慎重にする必要があります。世の中にはいろんな歯ブラシが市販されていますが、仮に歯周病ではない若年者が対象であれば、歯ブラシの選択に細かく神経を使う必要はないでしょう。

 歯周病の有無でどのような違いがあるかというと、歯周病ではない若年者の場合、ブラシを充てる場所が歯肉より上のエナメル質に覆われた歯の表面と、角化した外側の歯肉が主な対象となるため、ブラシの選択に特別な配慮は不要です。弾力性に富んだしっかりとしたブラシが適当で、特に毛先の形態も問われません。

 それにくらべ歯周病の場合は、ブラシの毛先を1~2mm歯肉溝の中に入れる磨き方をする必要があります。歯肉溝の中は角化していない非常に傷つきやすい歯肉なので、それを考慮したブラシを選択する必要があります。

 具体的には、ブラシを顕微鏡で拡大してみたと仮定すると、1本1本の毛先がある程度の太さを保ちつつまあるく加工されていることが望ましいのです。そうすると毛の1本1本がしっかり歯周ポケット内に入って折れ曲がりにくく、なおかつ歯肉を傷つけずに磨けて優れたブラッシング効果が得られます。

 なお、歯ブラシは毛がいくつかの束になって通気性の良い状態が維持されているものが望ましく、これによって通常次に使用する時までには乾燥することになり、細菌が死滅してくれるので非常に衛生的です。(大)