歯科における【包括治療】の意味を考えるとき、直訳すれば『歯科にかかわる全てのことを一つに合せひっくるめた治療』となりますが、それは何でもかんでも全体的に手を付ける(治療する)という意味ではありません。

 患者さんが受診するには、主訴*があるわけで、それを招いている病気の正体(実体、実際には病態)をいかに正確に把握するかが、治療の成功への鍵になると考えています。

 例えば患者さんが訴える症状が部分的であっても、そこだけの処置では後で問題が起きる場合が多々あることが明らかになっています。(再発したり周囲に移るなど)

 また歯周病は、初期から中期にかけて主だった症状がなく進行する慢性疾患です。普段は症状がなく、体調不良時などに違和感や痛み、腫れの症状が出、身体が元気になると症状が消えてしまう。

 施術する側(歯科医師)も、施術される側(患者さん)も消極的だと症状本位の治療になってしまい、根本的な原因(病因)が残るのでいずれ再発、これを繰り返して結局歯を失うことになりかねません。

 このようなことにならない為には、症状ばかりに眼を奪われることなく、検査で詳しく資料を収集し、問題点を列挙してそれを解決すべく治療計画を練る必要があります。

 実はこの治療計画を練るまでの取り組み(姿勢)こそが、包括治療の包括治療たる所以なのです。つまりこの後の治療計画によっては、必要とされる処置が部分的で済むこともあろうし広範囲になることもあるわけです。

 病気の本質をとらえ真の意味で病気を治すには、患者さんの訴える症状に左右されず、全体を見て診査、診断する。それこそが【包括治療】なのです。

 処置は一本の歯の治療で済むものから、全顎的(全ての歯牙の)治療を必要とするものまで多種多様です。(大)

*主訴:患者が医者に申し立てる症状のうちの、主要なもの。